オーストラリアの建築デザイン事務所、Archterra Architects が手がけた家、『 Bush House ( ブッシュハウス )』 は、40~60年代のカリフォルニアのケース・スタディ・ハウスからヒントを得た、環境に適した美しいデザインが特徴的です。
家が建っているのは、オーストラリア特有の木々が生い茂る、広大なブッシュの中。大きく平らな屋根は、まるで巨大なキャンプ用タープのように、北側から照りつける太陽から居住地を守っています。
2月でも気温が、40度前後まで上昇する過酷な乾燥帯の中、家をどのように快適に保っているのでしょうか ?
環境に適応する家
まず第一の特徴として、この家は西と東ではっきりと部屋の区分がされています。下の間取り図を見ると解るように、東側はリビングやキッチン、ダイニングなど、昼間に利用度が高いエリアに。西は、ベッドルームやバスルームを主に配置しています。
北側に面する部分は太陽側で暖かいというメリットがありますが、家の西側に位置する主寝室だけは、あえて南側に大きな窓をつけて、夕日を楽しめる工夫がされています。
南側に大きな窓が付けられたベッドルーム。絵のように存在感のある窓からは、美しい夕日を望むことができます。
家をふたつに西と東に分けているのが、巨大なラムドアース ( 英 : rammed earth ) という土壁です。
ラムドアースは、乾燥地域で多く見られる自然建築の一種で、割りと手に入れやすい土を主原料とし、コストダウンにもなる建築法です。なんといっても、断熱性と蓄熱性をそなえているので、高熱が降り注ぐオーストラリアの家の壁には適したアイディアです。しかし、一方で地震などで崩れやすいという点もあることから、この家では西と東を分けるためと玄関の外壁のみに、ラムアースの土壁を取り入れています。
他にも、耐久性と耐熱性をそなえた、ジンカリウムを枠組みなどのスチール部分に使い、メンテナンスを最小に抑えながら、家の持続性に特化した工夫がされています。
赤みをおびた美しい天井は、丁寧にアマニ油でオイル仕上げされた、オーストリアン・フープ・パイン( 英 ; Australian Hoop pine )という、オーストラリアとニューギニアでのみ生息するマツが使用されています。この天井は、北側に付き出した軒( ひさし )にも使われており、外と室内の境をなくした、アウトドアリビング感を演出しています。
また北側の床には、鉄筋コンクリート造のマンションなどに多く使われている、保温性のあるコンクリートスラブを使用し、あくまでも機能と持続性、低コストにポイントを置いた材料や建築法が特徴的です。
大きな屋根
巨大な屋根は、取り壊された倉庫の屋根をリサイクルし、再利用して作られています。ななめに傾いたフォルムは、ただ単に部屋の換気をよくし、日差しをさけるためではありません。
実はこの屋根には、ソーラーホットウォーターヒーター ( 英 ; solar hot water heater )という、画期的なシステムが搭載されているのです。
このシステムは、太陽熱を利用して水をつくり出すというもので、水不足に悩む地域で主に利用されています。つくり出された水は栄養分を豊富に含むため、特別な方法でろ過され、畑や庭にまく水として利用されます。
直射日光の当たるデッキと、長さのある屋根をつけた日陰げの快適なデッキ。両方を広々と楽しめるなんて、最高の贅沢ですね !
【 Garelly 】
自然の恩恵を感じつつ、低コストで快適な住居づくり。気温が高いから、乾燥してるから…ということではなく、あくまでそのメリットを利用する適材適所の建築デザインが、まさにカリフォルニアのケース・スタディ・ハウスのように、実験的でありつつ、持続性と快適さを追い求めた家づくりだと感じます。
参照元 : Bush House / Archterra Architects – Archdaily
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1930年代~1965年代は、カリフォルニアのモダンリヴィングの起源、 『 アーツ・アンド・アーキテクチュア 』 の企画で行われた実験的住宅建築プログラム、ケース・スタディ・ハウスなど、アメリカの建築において革命的な時代です。