ロンドンの住宅の代名詞であるビクトリアンハウス。老朽化してきた建物を、新築に建て替えることも多くなってきたそうですが、Chris Dyson Architects が手がけたのは、焼杉( やきすぎ )という日本の伝統的な手法を、古くからの建物に付け加えたモダンなリノベーションデザインです。
古くから日本家屋の外観に使われてきた焼杉( やきすぎ )は、浮造り( うづくり )とも呼ばれ、スギの表面を焼き焦がすことで耐火性や、風雨にさらされても強い耐久性、防虫力も高めるとされています。
現在では、薬剤処理で済ましてしまうということも多いそうですが、このプロジェクトでは昔ながらの日本の手法が実際に使われ、美しい焦げ茶カラーの外壁が見事に完成されました。
右側がビクトリアンハウスのレンガ壁をそのままにした外観、左側が日本の焼杉の手法を加えた増築部分です。
オーナーの要望が、ベッドルームを増やして欲しいということで、新たに大きな窓を付けた部屋が増設されました。
かつては表側にあった玄関を、あえて裏手に付け替えたことも、この増築プランのポイントとなっています。
この玄関はちょうど、古い建物と新しい増築部分との間にあります。
玄関の上部分をはあえて、天井までつづくガラス張りにすることで、双方の建物全体に明るい光をもたらし、建物同士の自然な境目としての役割も果たします。
ライトのいらない自然光がたっぷりと入る玄関。裏口とは言わせない、存在感たっぷりの入り口です。
古い建物の中にある階段部分には天窓を付けて、明るさを取り込む開放的な空間へとチェンジしました。
増設部分は明るいダイニングキッチンに。大きな窓は裏庭に面しており、テラスを見ながら食事を楽しむことができます。
ピザ窯もある広いテラスは、焼杉加工をしたシダーウッドの外観を、存分に満喫できる空間です。ここだけ切り取ってみると、郊外の森の家のようです。
ロンドンの街並みを守る古いビクトリアンハウスを残したいという気持ちに、失われつつある日本の伝統的手法が使われているなんて、ちょっと嬉しい気持ちになりますね。
ちなみに海外では、焼杉は 『 Shou Sugi Ban 焼杉板 』 として知れ渡っているようです。
世界の建築にも使われる、日本の伝統的なテクニック。旅先で出会ったら嬉しい、ちょっとした発見です。
参照元 : Chris Dyson Architects adds two blackened-wood extensions to a London terraced house – dezeen